90年代の呪いとしてのマクロス⊿
マクロス⊿の底から溢れいずるもの。
それは90年代の呪いである。
最近ずっとそう思って、ワルキューレの2枚のアルバムを聴いている。
1クール目のED。
これを聴いた時、おっさんなら誰もが思ったはずだ。
あ、これSMAPのSHAKEだ、と。
あ、これパクリって言われて炎上するやつだ、と。
調べたら、作曲者が同じ。
なんだ。
作曲者が同じだったらパクってもいいのか。
ん?
いやでもそれってクリエイターとしてどうなの?
アニソンだからって舐められてるのか?
20年前の曲ならバレないと思ったのか? (そうなのだ、SHAKEは96年発売でかっきり20年前なのだ!)
SHAKEみたいな曲、お願いしますよセンセイみたいな発注だったのか?
当初うずまいたそんな数々の疑念。
やがてそれらは雲散霧消する。
我々は慣らされ、侵されていったのだ。
ルンピカビームに!
マクロス恒例の新歌姫オーディションで勝ち上がった新人声優、鈴木みのりはマクロスFでデビューした中島愛と同じ系統の声と歌声で、はからずもプロデューサーの女の好みを露呈させたのだが、中島愛にあった湿度があまりない。
カラッとしてるのだ。
しかしこの冬のからっ風のような湿度の低さは油断ならない。
「準備はいいんかねっ!?」
曲の冒頭でフレイア(CV:鈴木みのり)が我々の耳元で語りかける。
謎の訛りで語りかける。
何の準備が必要なのだ?
わからない。
謎の問いかけで混乱する我々をあざ笑うかのように軽快に曲は進む。
そしてサビ前でフレイアがまた再び耳元で語りかける。
「覚悟するんよっ!」
ああ、我々に必要だったのは覚悟だったのだ。
タイアップ狙いミエミエで5人に膨れ上がりユニット化したマクロスの歌姫を、あるがまま、受けいれる覚悟が……その準備が必要だったのだ。
そして、私は受け入れたしまった。
さて、この1クール目EDが象徴しているように、振り返ってみるとワルキューレの楽曲は90年代JPOPの呪いみたいなものがにじみ出ている。
マクロス⊿の唯一の名シーンといった場所で流れたこの曲も同様だ。
オリジナルが見つからなかったので、カバーを貼るが……
似てる。
このように、わりとダサめな90年代歌謡曲調のメロディを現代風にリファインさせてアニソン化しているのがワルキューレ楽曲なんじゃないか。
マクロス⊿はそれをさらに推し進めたのではないか、と思うのだ。
とすれば、おっさんとしては受けいれる他ない。
90年代の呪いといえば、アニメ本編のラストこそ、まさに90年代アニメの象徴、エヴァンゲリオンの呪いだった。
美雲が綾波のごとく巨大化して、ラスボス化したメガネが唐突に人類補完計画みたいなことをいいだしたのだ。
びっくりした。
まだこんなことをやっているのか。
おっさんは90年代の呪いから逃げられないのだ。
そんな思いを噛み締めつつ、ワルキューレの2枚のアルバムを今日もまた聴き返すのだった。